4530人が本棚に入れています
本棚に追加
/953ページ
威力偵察といったら、敵に攻撃をし、反撃してくる敵の位置と数から敵の編制を観測する偵察方法だ。
当然にして、リスクが大きい。
しかし、それをおこなわなければならないのだろう。
「現在の戦況は、最前線より5キロ手前で主力部隊は待機状態になっている。
敵情が分からない以上、偵察は必至だ。
偵察で敵戦力が判明次第、日本軍の戦車中隊ないし10式戦車小隊が主力となって進行を開始する。
航空支援は……恐らく、F-35部隊は米空母の方に行くだろうが、日本軍は残るだろう。
ある程度なら当てにはなる。
何か質問は?
――宜しい、行動開始!」
「了解です!」
各小隊の小隊長たちは一斉に行動を開始した。
些かの間を置いて、各小隊の動きが始まる。
さて、ここからが俺達の本領発揮だ。
30分後……
車両で移動した俺達は、山の裾野まで降りていた。
此処はマウナケア山とマウナロア山との中間地点……つまり、谷だ。
マウナケア山もマウナロア山も車両が登れなくはないが、一般的に考えて、軍が侵攻するならこの谷間を通る。
此処は先ほどまでの激戦地区であり、近くには日米両軍の車両の残骸や、空になった塹壕がいた。
此処は谷間という事や、火山の火口から離れた所と言う事もあって起伏の激しい岩場があり、低木が生えている。
つまり、身を隠すには絶好の場所である。
中隊本部はそこから少し離れた所に設置し、(とは言っても俺と隊長とその他通信士等が数名いるだけ)小隊が疎らに散っていた。
「各員、IRシートの確認」
無線機越しに指令を飛ばす隊長。
IRシートとは、その名の通りIR波長……すなわち赤外線波長の電磁波をある程度遮蔽するシートだ。
コレを着用する事によって、体から発せられる赤外線を、周囲と同一レベルまで調整する事が出来る。
この時代では無用の長物と思われていた対IR装備だが、相手が未来の米軍となれば話は別だ。
ある意味、未来の米軍だからこそ本領を発揮できるのである。
「こちらベータ、問題無し」
「チャーリーも同じく」
「エコー、大丈夫です」
各小隊から応答が帰る
大丈夫な様だ。
最初のコメントを投稿しよう!