雷跡15 霧の向こう

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しかし、目視や双眼鏡では、偽装している俺達を見ることはできない。 すると、右隣りにもう一つ砲塔が見えた。 天板の無い砲塔。 恐らくM18駆逐戦車、ヘルキャットだ。 そして左隣にもう一つ砲塔が見える。 あれ? 砲塔か? 角が丸まった形をしたもの。 かなり小さい 大きさからして、恐らく軽戦車クラスの戦車砲塔であろうが、砲身が無ければペリスコープどころか何もない。 のっぺらぼうな砲塔だ。 「なんだあれは……」 隊長も分からない様だ。 すると、先ほどのT-20とM18が稜線を超えてきた。 安全と判断したらしい。 更に続けて数量のT-20やM18が出てくる。 しかし、あののっぺらぼうはそのままだし、第一、陽炎の量があの数ではとてもではないが足りない。 だが、それも間もなく解決する…… 「うわぁ……来たなぁ……」 その2両の後に続けてきたのはM4A3E2……通称シャーマンジャンボ。 そして戦列を並べたM6重戦車。 2個戦車中隊はあろうかという規模だ。 しかし、この程度なら5式戦車中隊で撃破出来る。 「本部に通達。 米中戦車……いや、待て。 無線機を切れ」 「はい?」 「良いから無線機を切れ!」 「はっはい!」 突然隊長が権幕を張った。 そう、隊長は見逃さなかったのだ。 あののっぺらぼうが『揺れた』のを。 次の瞬間、そののっぺらぼうが浮き上がった。 その下にあるのは巨大なメインローター。 そして、コックピット。 「アパッチ・ロングボウ!」 思わず叫ぶ。 どうやら、俺達はアパッチのメインローターの上についているロングボウ・レーダーを戦車砲塔と勘違いしていたらしい。 稜線から完全に姿を現したアパッチ。 見えていたのは1機だけだったが、続けざまに2機、3機と出てくる。 「6、いや、7機はいますそれにコブラも……」 必至に数える。 これでも十分に悪夢だが、更にきた。 再び稜線から姿を現した戦車砲塔。 しかし、その砲塔のサイズは明らかにおかしい。 猛烈な廃熱を出しながら稜線を上がったもの。 それは、M1A2SEP。 エイブラムス主力戦車だ。
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