雷跡15 霧の向こう

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〈本部より迎撃部隊、本部より迎撃部隊。 敵進行勢力は、米MBTを主体とする機甲部隊の模様。 対戦車装備を厳とせよ〉 再び入った無線。 MBT……主力戦車って事はエイブラムスか? 大丈夫なのか? 辺りを見回す。 此処にはある程度車両が終結されている。 しかし、こちらには10式はいない。 殆どが別の島で、この島にいる4両は整備で遅れている。 いや、多目的誘導弾がある。 これなら十分戦車には対抗可能な筈だかが…… 〈本部より全隊へ、本部より全隊へ。 TOT発動、TOT発動。 全隊、回線をアクティブにし、諸言情報を取得せよ〉 ほう、こちらから攻め入るか。 「景山、通信回線から情報を得てくれ」 「了解です」 ちょっとした操作の後、画面に敵勢力の情報が入る。 TOT……同時着弾射撃の予定時刻は今から337秒後。 ざっと5分と言った所だろう。 俺達には有効な対戦車兵器が存在しないのでする必要は皆無であるが、やはり監視はしていたい。 途端、エンジンの音が聞こえる。 対戦車火器を持っている部隊が一斉に移動しているのだろう。 恐らく、日本軍の戦車部隊が先頭、後ろにMMPM(中距離多目的誘導弾)といった所か? あくまで推測だ。 〈第1班より第5班、準備完了。 敵機甲科戦力をIRレーダーにて確認。 逆探知回避の為、ロックオンせず〉 おお、見つけたか。 〈対空1班。 近SAM準備完了。 いつでも射撃可能!〉 準備が整った様だ。 いくら湾岸戦争では絶大な防御を誇ったエイブラムスとはいえ、光ファイバー制御によって真上から飛来する中距離多目的誘導弾を食らっては無事でいられる筈が無い。 〈TOT60秒前!〉 〈MMPM発射40秒前〉 後少しだ…… 〈MMPM発射30秒前!〉 丁度その時、地響きがした。 何だ? 〈対空警戒対空警戒! マウナロア山頂付近に敵機!〉 何! とっさにハッチを開け、車外に体を出す。 東の方向。 マウナロア山の上に黒い点が見えた。 数は10程。 この速度、無人機じゃない。 「F-35C!」
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