雷跡15 霧の向こう

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次の瞬間、機体下部から白い煙が噴き出した。 「伏せろ!」 必至に叫ぶ。 しかし、意味は無かった。 刹那、閃光が煌く。 体をひっぱたく様な衝撃と共に、爆風が吹き荒れた。 舞い上がる爆炎。 視界を覆う土煙。 破片だの、肉体だのが舞い上がる。 そして、真上を通り過ぎる機体。 戦場の様相は、一瞬にして激変した。 通り過ぎるF-35Cの機体。 その翼には、米海軍のマーク…… 相手はステルス機だ。 戦場監視レーダー程度では探知しきれない。 だけど……くっそ! 〈本部より迎撃部隊、本部より迎撃部隊。 MMPSの射撃が確認できない。 何が起きた?〉 車内から聞こえる無線。 辺りを見回す。 「――そんな……」 辺りは、黒煙に包まれていた。 吹き飛んだ通信指揮車。 転がり落ちた近SAM。 MMPSの戦列に至っては原型を失うどころか、破片くらいしか残っていない。 数台が生き残っていたが、まともに運用できるレベルかどうか…… 幸い、俺達がいるのは少々後方なのでこちらへの着弾は少ないが、前線で待機していた対戦車火器の戦列は完全に吹き飛んでいる。 ミサイルも使われたのだろうか…… 〈迎撃部隊より本部! 我、米軍機の空爆を受ける。 隊長車両は撃破される。 現時点より、副隊長、大井が指揮を取る〉 〈こちら本部。 了解した。 続けて通達。 マウナロア山頂に、敵歩兵戦力を確認。 全体、ただちに退避行動をとれ〉 とっさにマウナロア山頂を見る。 裸眼ではとても無理な距離。 しかし、IR波長に変換し、倍率を上げると、車両が見える。 ストライカーにハンヴィー、それにクーガも…… 並んだ車列。 全て計算通りか…… 〈全体、配置転換! 走行不能の車両は廃棄! 生存者は開いている車両に乗れ!〉 一斉にエンジンを吹かす車両経ち。 「隊長、どうしますか?」 景山も聞いてくるが、答えは決まっている。 「他の部隊と一緒に撤退だ。 流石にASSもこれを相手には出来ない」 RWSで自動追尾されたM2なんて撃たれたらたまらない。 〈他に生存者はいないか!?〉 響く無線。
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