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次の瞬間、機体下部から白い煙が噴き出した。
「伏せろ!」
必至に叫ぶ。
しかし、意味は無かった。
刹那、閃光が煌く。
体をひっぱたく様な衝撃と共に、爆風が吹き荒れた。
舞い上がる爆炎。
視界を覆う土煙。
破片だの、肉体だのが舞い上がる。
そして、真上を通り過ぎる機体。
戦場の様相は、一瞬にして激変した。
通り過ぎるF-35Cの機体。
その翼には、米海軍のマーク……
相手はステルス機だ。
戦場監視レーダー程度では探知しきれない。
だけど……くっそ!
〈本部より迎撃部隊、本部より迎撃部隊。
MMPSの射撃が確認できない。
何が起きた?〉
車内から聞こえる無線。
辺りを見回す。
「――そんな……」
辺りは、黒煙に包まれていた。
吹き飛んだ通信指揮車。
転がり落ちた近SAM。
MMPSの戦列に至っては原型を失うどころか、破片くらいしか残っていない。
数台が生き残っていたが、まともに運用できるレベルかどうか……
幸い、俺達がいるのは少々後方なのでこちらへの着弾は少ないが、前線で待機していた対戦車火器の戦列は完全に吹き飛んでいる。
ミサイルも使われたのだろうか……
〈迎撃部隊より本部!
我、米軍機の空爆を受ける。
隊長車両は撃破される。
現時点より、副隊長、大井が指揮を取る〉
〈こちら本部。
了解した。
続けて通達。
マウナロア山頂に、敵歩兵戦力を確認。
全体、ただちに退避行動をとれ〉
とっさにマウナロア山頂を見る。
裸眼ではとても無理な距離。
しかし、IR波長に変換し、倍率を上げると、車両が見える。
ストライカーにハンヴィー、それにクーガも……
並んだ車列。
全て計算通りか……
〈全体、配置転換!
走行不能の車両は廃棄!
生存者は開いている車両に乗れ!〉
一斉にエンジンを吹かす車両経ち。
「隊長、どうしますか?」
景山も聞いてくるが、答えは決まっている。
「他の部隊と一緒に撤退だ。
流石にASSもこれを相手には出来ない」
RWSで自動追尾されたM2なんて撃たれたらたまらない。
〈他に生存者はいないか!?〉
響く無線。
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