雷跡15 霧の向こう

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同時に、背後に響く轟音。 マウナロア山を再び編隊が飛び越える。 ツインターボジェットエンジン。 傾斜尾翼。 膨らんだストレーキ。 米空母艦載機の代名詞的存在……F/A-18F スーパーホーネットだ。 今となっては旧式の機体であるが、コストパフォーマンスと汎用性の高さから未だに空母に搭載されている機体。 それが、十数機程の編隊を組んで俺達の真上を通り過ぎて行った。 海自に攻撃を仕掛けるつもりか? 最初に攻撃を始めたのはF-35だった。 ウェポンベイから放たれたAGM-84ハープン。 超音速対艦ミサイルが普及している中では旧式のミサイルであるが、強力だ。 それとほぼ同時に、「あたご」や「あきづき」から噴煙が上がった。 放たれたESSMの群れ。 それらは、F-35から放たれたハープンを次々と撃ち落とし、F-35にも迫った。 チャフ、フレアを放出するF-35。 ステルス機だ。 極僅かなレーダー投影面積しか持たないステルス機に対し、艦対空ミサイルは満足な行動を示さないものの、2機は命中した。 爆散する機体。 破片が海面に降り注ぐ。 「――近い!」 この光景を見て、最初に思った言葉がそれだった。 何せ、敵同士が視認できる距離まで迫って戦闘を行っている。 本来なら、強力なレーダーを使用して水平線の向こうから、GPSの誘導によって攻撃を仕掛けるのが現代戦闘。 しかし、巨大な島にレーダーを遮られ、人工衛星が存在しないこの戦場では、いかに最新鋭の機体と言えどきわめ至近で攻撃を受けていた。 必至に退避行動を行うF-35。 連合艦隊も応戦を開始し、対空砲火が襲う。 一部艦艇は電探連動砲を採用しているものの、殆ど(というよりレーダーに映らない)目視標準で撃っている為当たりはしないがそれでも脅威だ。 早々にF-35は切り上げ、続けざまにスーパーホーネットの編隊が一斉にハープンを発射する。 自衛艦隊。 そして、海軍艦艇。 数で攻め入った。 一斉に放たれるハープン。 甲板を煙で包むESSM。
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