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「ん?」
辻の反対側で草鞋の紐を結び治していた男が、すっと立ち上がった。
お鈴ちゃんが駆けていった後に、少し距離を空けて同じ方向に歩き始める。
「…………?」
一見、どこにでもいる町人に見えた。
黄ばんだ手拭いを頭に被り、年季の入った薄茶の着物に股引という、ごく普通の姿。
片手に唐草模様の風呂敷包みを提げ、猫背で足早に歩いてゆく。
しかし、草鞋の紐を結んでいたにしては、彼はやけに長いこと屈んでいた。
(……まさか)
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