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あくる日もあくる日も同じ悪夢にうなされ、あらゆる加持祈祷を行うが一向に効果が無い。
城主は見る目も当てられぬほどにやつれ、衰弱していった。
奇妙なことに、悪夢を見始めるようになってから、城主の体の至るところに太縄で締め付けたような、奇妙な痣(あざ)が浮かび上がり、それは日に日に濃くなってゆく。
何故か、悪夢を見ないはずの奥方の体にも同様の痣が浮かび、それは城主とは反対に時を経るごとに薄くなっていった。
在る日、下働きの下男が庭の掃除をしていたところ、城の片隅の焼け野原と化した一角に、白い蛇がとぐろを巻いているのを見かけた。
それを家臣から聞いた城主は、城の内はおろか、領内の全ての蛇を狩るように「蛇狩り」のふれを出す。
蛇の死骸には一匹につき銭一貫文の褒美と引きかえられ、民はこぞって蛇の死骸を手に、役所へ押し寄せた。
だが、それが蛇の祟りに拍車をかけたのか、その年は凶作が続き、藩の財政は一気に赤字へと傾く。
堪りかねた城主は高名な僧を招き、事の顛末を話して助けを乞う。
高僧は城主と家臣から一通りの話を聞くと、こう言った。
「前の藩主と奥方を手厚く供養すること。そして庭の一角、丑寅の方角に祠を建て白い蛇を祀り、年に一度は藤の花を供え、末代まで崇めるように」
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