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「……私で、良いのでしょうか?」
頂いた面の縁を握りしめる。
「そうさね、お前さんは誰よりも優しく、誠実な男だ。
きっと多くの民を救い、多くの者に慕われるよ」
暖かい言葉に、不意に涙腺が弛んだ。
涙が零れないよう、俯いて目を拭う。
自分は決して立派な人間ではない。
それどころか“忌み児”として疎まれ、蔑まれていた。
自分を受け入れてくれた、一部の心優しい人々の情けに救われながら生きてきたのだ。
その彼らに恩を返すことも出来ないうちに死んでしまったけれど。
――しかし今一度、生を受けることが許されるのならば。
こんな自分でも、誰かの助けになることができるのだろうか。
今度は自分意外の誰かのために生きても良いのだろうか。
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