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ひとしきり拝んだ後、彼女は橘の実がついた枝を供えて去って行った。
「……うーん、参ったなあ」
助けてあげたいのは山々だ。
そもそも辻神――道祖神は土地の守り神であると同時に、旅人にご利益をもたらす神でもある。
わざわざ足を運んでくれる彼女に、何か少しでも報いてやりたい。
しかし間の悪いことに、先日の阨祓いで思いの外力を消耗したため、それが回復するまで社から離れることができない。
せめて彼女が夫をここまで連れて来てくれたら、病を祓うことも出来るだろう。
だが、私を“視る”ことが出来ない彼女にそれを伝える術すら無い。
「……八方塞がりだな」
どうすることも出来ないのだろうか。
せっかく、手を合わせてくれたのに……。
申し訳なさと無力感、罪悪感が胸をよぎった。
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