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彼女が供えてくれた橘の実を枝からもいで、皮を剥く。
柑橘に特有の爽やかな香がふわりと広がった。
「すおーちゃん、何食べとるん?」
社の横から、座敷わらしのお鈴ちゃんがひょっこりと顔を出す。
「ああ、お鈴ちゃんか。
半分食べる?」
「ちょーだい!」
いそいそと屋根によじ登ると、無邪気に両手を出してきた。
「はい」
「悪いねぇ」
見た目はどう見ても10歳にも満たない幼子だが、まるでお婆さんのような話し方をする。
お鈴ちゃんは私よりずっと歳が上だ。
享年こそ幼いが、座敷わらしとなってから100年近くの時を過ごしているのだという。
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