第二章 痕跡

1/8
1407人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ

第二章 痕跡

男は女の人が宿屋に戻るのを見ると、門の近くをうろうろとたむろする。 (彼女を見張るつもりか……?) すると女の人と入れ替わるように、宿から男が出てきた。彼は門の近くでたむろする男に近づくと、ボソボソと小言で声をかけた。 「――様はご無事でおられる。しかし、随分と弱っておられた。――――は酷くなるばかりじゃ」 「早くしないと、手遅れになる。先代もそうじゃった。“あれ”は、――――は……」 少し離れていると、人混みの雑音も混ざって話し声が聞こえない。 「あの娘が、奥様方から――――を継いだというのか?若様ではなく?」 「――――は血筋のものではない。なぜかあの家に嫁ぐ女にしか憑かぬのじゃ」 (……血筋?) 辛うじて声が聞き取れるものの、何のことを話しているのかさっぱり分からない。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!