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第二章 痕跡
男は女の人が宿屋に戻るのを見ると、門の近くをうろうろとたむろする。
(彼女を見張るつもりか……?)
すると女の人と入れ替わるように、宿から男が出てきた。彼は門の近くでたむろする男に近づくと、ボソボソと小言で声をかけた。
「――様はご無事でおられる。しかし、随分と弱っておられた。――――は酷くなるばかりじゃ」
「早くしないと、手遅れになる。先代もそうじゃった。“あれ”は、――――は……」
少し離れていると、人混みの雑音も混ざって話し声が聞こえない。
「あの娘が、奥様方から――――を継いだというのか?若様ではなく?」
「――――は血筋のものではない。なぜかあの家に嫁ぐ女にしか憑かぬのじゃ」
(……血筋?)
辛うじて声が聞き取れるものの、何のことを話しているのかさっぱり分からない。
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