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僕は考える。答えは出ないだろう。僕は帰ろうと歩き出した。すると僕の体を風と何かが圧し止める。
「桜…の花びら。」
足を出そうとするが体が言う事を聞かない。僕は仕方なく風の行く方向に振り返る。するとそこには…。
「…ユキ!」
ユキは悲しげな表情で風と、桜の花びらと戯れていた。
「ユキ…、会いたかったよ…。」
僕はユキに手を伸ばす。なのに…届かない。どうして?
ど う し て …
君 に 触 れ た い
するとユキは僕をみて口を開いた。懐かしく、穏やかでどこか優雅な声で。
《僕は君を見てるから。何処からか君を。》
そう言うとユキは風と桜の花びらを残して僕の目の前から消えた。僕は何故か笑った。そして…
泣いていた。
君が消えて悲しかったんじゃなくて、
嬉しかった
君に会えて何か新しい自分が見えた気がした。風はいつのまにか道に落ちていた桜の花びらを空に巻き上げていた。
その日から僕は何かが変わった。ユキの記憶が薄れていくのは寂しいけれど、もう大丈夫。
桜の木の下に来れば思いでは蘇るから…。
四月十二日 ユキに贈る
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