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…風が出てきた。柳の枝が揺れる。今は夜中。肝試し中。鬮(クジ)で決まった相方はお目あての女性。クラスでも一番の女性だ。
ん、なぜ女子って言わないのかって? …見たら分かると思うが大人びたって言うか…。
クラス替えがあって全ての男子が一目惚れ。僕以外はね。だがこの女性は美しいだけでなく 勉強も 運動も 人付き合いも 全てにおいて完璧。
だが僕はこの女性の秘密を知っている。
「今日の肝試し…、貴方と一緒で良かったわ。」
「本当に生む心算なの?」
「えぇ。」
この女性は子を妊っていた。しかも見ず知らずのストーカーに強姦されて。恵まれた訳ではない…。なのに…。
「どうして、産もうと思ったの?」
「子どもを殺すなんて…。どんな状態でも、こんな歳でも、子どもをお腹に宿すと生みたい気持ちが堕ろしたい気持ちよりも勝つのよ。男の人には分からないでしょうけど…。」
この女性は上品に笑っている。男女平等とか言うご時世だけど、女の人は分からない。
「でも、この事は…。」
「もちろん、学校側は知っているわ。必死で揉み消そうとしているけどね。でも命を絶つことは許されないことよ。例えそれが、恵まれない環境であっても。ね。貴方も。」
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