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「だが、兵士共を懐柔したところで状況は圧倒的最悪だろ。平和に浸かりきった奴等が、まじな戦を経験してきた本場の兵士共に太刀打ちできるとは思えねえな。それにあの腹黒な王子様なこったぁ。マモアだけでなく、他の国とも繋がってるかもしれねえぞ」
「脳味噌まで筋肉でできているような野蛮な輩と同意見というのは大層気に食わんが……」
「おい。聞き捨てならねえな」
「マモアだけでも強敵ですぞ。それに、マモアにいるラニア様はどうなさるおつもりで?」
問題が山積みなのは重々承知だ。
しかしそれを二人に次々と指摘されてしまえば、ユゼからは重い溜め息が漏れてしまって。
「あれでも、王は確かに王だったよ」
意味深な言葉を吐いた。
それを気いたゼシュとアーモンにはその意味が分からずに眉を寄せて、どういう意味だと威圧的にユゼに聞けば、ユゼは自分の瞳と同じ色をした空に目を向けた。
その方角は城のある方で。
「隣国に、あの街を守るように誓約を交わしていたんだ」
いつしかユシュアの言葉の方が城の中では決定権を持っていた。
いつしか王という立場はお飾りの様になっていた。
けれど、それでも王という立場は唯一無二なもので、王はユシュアには気付かれないように動いていたのだ。
ユゼだって王の動向は知らなかったし興味無かったけれど、王と初めて沢山の言葉を交わしたあの日にそのことも含めて聞かされて、やはりこの人が王なんだと、思ったもので。
ユシュアにも先代の王にも悩みながらも、一人葛藤していた様を垣間見たような気がしては、あの人も色々悩んだり苦しんだりする一人の人間なんだなと、そうも思った。
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