627人が本棚に入れています
本棚に追加
「酷い目にあったッス……」
僕は1人で無駄に広い先輩の家のリビングで弾んでいた。
ちなみに、細切れにされても全然痛く無かったし、某スライムみたいに合体したら元に戻った。
地味に慣れて来ている自分が怖い。
「暇ッスねー」
コロコロ弾みながら転がる。
先輩は今、僕を治す方法が無いか、自宅の書庫に籠っている。
「元に戻れるんスかねぇ……」
時間が立つにつれて、戻れないんじゃないか、とかいう不安が大きくなってくる。
「しっかし、カンナギ先輩ホントドSッス。細切れにするなんて酷いッス」
先輩曰く、恐れおののく表情が良いらしい。
僕には到底理解出来なさそうだ。
なんだか暇だったので、色々呟くことにした。
「姉貴は今日何のクエスト行ったんだっけ……」
「たしか、ゴブリン100体とボスゴブリンだったッス」
「1人で行ったらしいッス」
「でも、多分無傷ッス」
「姉貴はホントチートッス」
「姉貴よりカンナギ先輩のが美人ッス」
「誰が美人、ですか?」
「え」
振り返れば、本を抱えた、超にこやかな笑顔の先輩が。
背中を冷や汗が流れまくる。
ヤバい。
あの笑顔はヤバい。
「反省してください♪」
「ギャアァァァァ!!」
僕は氷漬けになった。
最初のコメントを投稿しよう!