僕はただの一生徒だったのに

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「酷い目にあったッス……」 僕は1人で無駄に広い先輩の家のリビングで弾んでいた。 ちなみに、細切れにされても全然痛く無かったし、某スライムみたいに合体したら元に戻った。 地味に慣れて来ている自分が怖い。 「暇ッスねー」 コロコロ弾みながら転がる。 先輩は今、僕を治す方法が無いか、自宅の書庫に籠っている。 「元に戻れるんスかねぇ……」 時間が立つにつれて、戻れないんじゃないか、とかいう不安が大きくなってくる。 「しっかし、カンナギ先輩ホントドSッス。細切れにするなんて酷いッス」 先輩曰く、恐れおののく表情が良いらしい。 僕には到底理解出来なさそうだ。 なんだか暇だったので、色々呟くことにした。 「姉貴は今日何のクエスト行ったんだっけ……」 「たしか、ゴブリン100体とボスゴブリンだったッス」 「1人で行ったらしいッス」 「でも、多分無傷ッス」 「姉貴はホントチートッス」 「姉貴よりカンナギ先輩のが美人ッス」 「誰が美人、ですか?」 「え」 振り返れば、本を抱えた、超にこやかな笑顔の先輩が。 背中を冷や汗が流れまくる。 ヤバい。 あの笑顔はヤバい。 「反省してください♪」 「ギャアァァァァ!!」 僕は氷漬けになった。
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