僕はただの一生徒だったのに

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「で、何か良いのはあったんスか?」 一時間後。 なんとか氷から抜け出した僕は、先輩に聞いた。 「残念ながら良いのはありませんでした」 「じゃあ、カンナギ先輩が持ってきたのは?」 僕は、先輩が抱えてきた無駄に分厚い本を見る。 「これは僕が今日使おうとした魔術の魔術書です。何処で間違えたかは覚えてますので、せめて確認をと思いまして」 「成る程ッス」 先輩は、その魔術書をパラパラとめくる。 「ありました。ここです」 先輩が魔術書の一行を指差す。 一応、魔術の勉強してはいるのでわかるけど、得意じゃない属性の魔術の術式な為、細かい意味はわからない。 「このα式を3行先のα-2式に間違えて連結してしまったんです」 見れば、少し術式が似ていた。 「最近覚えたばかりでしたので……」 「成る程ッス」 「覚えたばかりだから使ってみたかったんです。それがこんなことになるなんて……」 「落ち込まないで欲しいッス」 さっきのドSなのが信じられないくらいの落ち込み様である。 まぁ、普段はこっちなんだけど。
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