出逢いは仇として

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  何もかも奪われた者の強さは命を惜しみなく賭すことが出きるというところにある。 彼女はそんな死をも怖れぬ強さを持ってして、荒ぶる気持ちを沈めると門番のもとへ一歩一歩歩み寄った。 「あの、すみません。こちらで尊皇攘夷の志士を募っていると聞いたのですが……」 滋の策とは志士に志願するフリをして首謀者を探り当て、近付き、殺してしまおうというもの。 だからこそあくまで控え目に控え目に物を言う。 殺意を感づかれたら、女と感づかれたら、首謀者に会う前に捕まって下手したら自分が殺される。 今にも抜刀してしまいそうな激昂を押し殺して。 だが、門番は訝しむような一瞥をくれると軽くあしらう。 「ふん、今、長州は先週の池田屋騒動の事後処理に忙しいのだ。貴様がどこで長州が尊皇攘夷志士を庇護していると聞いたか知らぬがそれは過去の話。もとより貴様のような軟弱そうな輩を誰が志士として迎え入れるか。帰れ、帰れ」 「しかしっ――」 「ならんと言っておろう!」 「私は死をも覚悟でやって参ったのです! せめて面接だけでもっ」 必死に食い下がる滋に門番はやれやれと肩を竦めた。  
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