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暫くして、東へ行った小吉が戻って来た。
小吉の得意気そうな顔を見て、俺は今にも吹き出しそうになるのを、膝をガクガクさせながら堪えた。
「穫ってきたよ……、はいオクラ」
ーー マジかよ! 大きさはセーフだけど、産毛みたいなイガイガが……駄目だ、死にそうなくらい、可笑しすきる ーー
とにかく、俺は笑いを死にもの狂いで堪えた。
涙が容赦なくポタポタ落ちていた。
まっちゃんの命令に、小吉は不満気にブツブツ言いながら、テントの中に消えて行った。
まっちゃんは遠慮なく、ゲラゲラ笑っている。
時折、テントの中から「イテっ」と、小吉の声が聞こえてきる。
その度に、小吉の屈辱的な姿を想像してしまい、三丁目の横綱ババァの事なんて、どうでもいいくらいに、笑いたくて死にそうになる。
尻を抑えながら、歩き難そうに小吉がテントから出て来た。
小吉は俺に近寄って来て、耳元で囁いた。
「マサルは何入れたの?」
「野イチゴ……」
小吉は危うく吹き出しそうになった。
それに釣られて俺も……。
それを、まっちゃんが厳しい目で見ていた。
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