シンセン組

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それから、ひと月が経った。 僕は足繁く石井秩の家へと通った。 日に二度通うこともあった。 沖田総司に赤子の様子を報告するため、そして僕自身が赤子に愛情を感じつつあると共に、毎日のように秩と赤子の様子を見に訪ねるイネに会いたい気持ちもあった。 僕と彼女は日に日に交流を増し、時には診療後の彼女と茶屋に寄ることもあった。 そんな時、人々は奇異な目でイネを見る。 日本人離れした容姿の大和撫子を皆、興味深げに見つめるのだ。中にはイネについてひそひそと囁き合う者もいた。 そうするとイネは決まって申し訳なさそうな顔で僕を見るのだった。 「君がいれば赤子は安心だと、今後もよろしく頼むと沖田さんが言っていたよ」 僕は周囲の目も、イネの羞恥も気がつかぬふりで言った。すると、イネははにかんだように微笑んだ。 「ありがたいお言葉をかけていただき恐縮です」 それから北陸の天候のように表情を曇らせる。 「本当にありがたいお言葉。けれど、惣次郎様……」 イネの細く白い指が震えていた。
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