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そんなこんなで宮川君(?)にジャージを借り、俺はコートの上に立っている。
なぜか観客の人数が半端ない。体育館の観客席までもがぎゅうぎゅう詰めだ。
「なんでこうなった?」
俺が無意識な呟きが聞こえたのか菅原君(?)が俺に近づいてきた。
「悪いな。準決で一人負傷してな。一人足りなくなっちまったんだよ」
あぁ、今からやるの決勝なんだ。それならこの人数の多さに納得だな。
「つーか、俺が助っ人じゃなくてもよくね?
自分的にやる気がない雰囲気を醸し出しといるつもりなんだけど……。
吉永君(?)はあれかい?KYなのかい?」
そんな俺の質問に頭を三島君(?)は掻きながら気まずそうに答えた。
「KYとはよく言われる」
あっ、言われるんだ。
「球技大会には一人1競技までってルールがあるんだ。
俺達はあいつを倒すために出来るだけたくさんのチームを組んだ。
その制で補欠要員なしにしたんだ。それがまさか裏目に出たとは……」
クソッと握り拳を作る設楽君(?)を見ながら俺は思った。
こいつらアホじゃね?
普通、アクシデントやまさかの事態に備えて考えるだろ。
それにこいつらが言う"あいつ"を倒すのなら出来るだけチームを組むのではなく、上手い選手で構成すればいいだろ。
普通なら思い付くけどその"あいつ"を倒すことに真剣になりすぎて簡単な方法を見落としたんだな。
「てか"あいつ"って誰?」
「あぁ、それは……」
とその時、観客の黄色い声援が会場内を包み込んだ。
その瞬間に俺は"あいつ"という存在が誰なのかを悟った。
知多(?)君は騒ぎの原因、やつを睨みつけながら口を開く。
「"あいつ"とは俺達と同じクラスのイケメン超人こと春風颯人だよ」
……あぁ、やっぱり。
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