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司は電柱に寄りかかりながら、ゆっくりとその場に腰を下ろした。
空を見上げると、今にも雨が降ってきそうな雲行きだった。
司は、ジーンズのポケットからタバコを取り出し口にくわえ、おぼつかない手で、タバコに火をつけた。
『ふー……』
司の口から出た煙は、瞬く間に空中へと溶け込んでいく。
『ちくしょ、派手にやりやがって……ペッ!』
司はタバコを口から外し、唾を吐き、そしてタバコのフィルターを見つめている。
フィルターは、血で真っ赤に染まっていた。
『あいつは、あいつは分かってる……きっと……』
司は独り言を言いながら、その場で意識がなくなった。
司が目を閉じると同時に、空からは大粒の雨が落ちてきた。
ザーザー……
道路に落ちた雨は、しぶきをあげ、司を取り囲むようにもやを形成した……
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