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「アナタ死にたいの?」
近寄って来た女の子はそう言った。
女の子の拳銃はいつの間にか消えていた。
「死にたくないけど?」
女の子の綺麗で長い黒髪は風で後ろになびいていた。
「ならアナタはさっきの小鬼≪ゴブリン≫に何をしようとしていたの?」
さっきの鬼面は小鬼≪ゴブリン≫と言うようだ。
「殴って消そうとしたんだけど?」
彼女の大きな瞳がより大きくなった。
そんな気がした。
「アナタはバカなのね……」
ハァと溜め息が聞こえた。
「なにが?」
ぼくはいつもの様に怪物を消そうとしただけだった。
「“普通”ああいうのが見えたら逃げるでしょう」
小さな子を相手にする大人の様に彼女は言った。
ぼくはそれが理解できなかった。
「いや“普通”ああいうのが見えたら殴って消すけど?」
それは、戦争を知っているか否か、日本人かアメリカ人か、富豪か貧乏か、といったような価値観の離れた者同士の会話だった。
「消せる訳無いでしょう」
それは馬鹿に馬鹿みたいと言うようだった。
というか馬鹿にされてる気がする。
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