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 森はざあざあとざわめき怯えていた。  風が逃げるように吹き抜け、より木々を怯えさせた。 「どこへ行った!」  男が叫んだ。 「そっちへ行ったぞ!」  別の男が叫んだ。 「絶対に逃がすな!」  数人の男たちは皆が皆手に武器を持ち、鬼の形相で必死に走っていた。手にする武器は鎌や鋤、もちろん剣やボーガンもだ。  目標は数メートル前を逃げる人間の姿をした獣。  村から出る前に仕留めなければならない。男たちは必死であった。  獣が少し足をもつれさせた一瞬の隙、ボーガンの矢が数本放たれた。  ひゅっと風を切り矢が獣の足を射抜いた。  男たちは獣の背後に追い付くと、振り返る獣の首筋めがけて剣を振り降ろした。  どす黒い血が噴水をあげ、断末魔の叫び声と共に頭は宙を飛んだ。  どすんと地面に倒れた身体の左胸に、男たちは何度も武器を突き付けた。  血が何度も飛沫をあげ男たちを赤く染めた。  ひとりの男が転がる頭部を見て驚愕した。 「……コーエン!?」  それに気付いた周りの男たちも、同じように驚きを隠すことが出来なかった。 「ばかな……なぜ今更こんなことが……!?」  男たちは途方に暮れ皆目を地に伏せた。  人間の姿をした獣は獣ではなく人間であった。  コーエンと呼ばれた男はすぐに焼かれ灰と化した。  男たちはすぐに村長に報告すべく村長の元へと向かった。  事の始まりは数日前、激しい雨の夜であった。  村の羊や豚などの家畜が数頭死体で発見された。  野犬や狼かとも思われたが、特に目立った外傷はなく疫病によるものだと村人は傷心した。  だが事態は疫病よりも深刻であった。  解剖して調べるために放置してあった家畜の死体が忽然と姿を消したのだ。  村は騒然となり次第に不気味な恐怖が背筋を撫で回した。  それから何日かした夜、家畜たちが騒がしく吠えたて始めたので、農主であるガトは外へ様子を見に出た。  近隣の人間もやはり気になったのか、数人顔を見合わせるとそれぞれの畑や放牧場、小屋などを見て回った。  ……ギャァアアアア!?  突然どこからか耳を衝く断末魔の悲鳴が村を走った。  ガトは近くにあった鋤を手に取ると急いで表へ飛び出した。  黒い影が走り去っていくのが見える。 「あいつを追ってくれ!」  トマスが目の前を横切った。 「分かった!」  そして今、その影を追い、焼き払い、男たちは村長の家にいた。
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