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ラキ・レイミャー 異世界リルアチュア、人間の大国ハーゼンの平民。 ギルド暁の事務員で受付業務の統括担当。統括の仕事もあるが受付シフトにも入る。 仕事が丁寧なので暁ギルド員にファンが多数居る。 ギルド員としてのランクはA。 属性:光 得手:刀 使い魔:ハーピィ(1級の中) *** ギルド暁の営業時間に休みはない。 魔物被害が出ればいつでも依頼として受理するし、ギルド員が任務から帰ってくればいつでも報告を受ける。 公式ギルドの名は伊達ではないのだ。非常事態が起これば、真夜中でもギルドを解放して避難民を受け入れたりもする義務がある。 そのギルド暁には様々な事務職員が居るが、その中でも受付業務は花形と言っていい。 なにせ、ギルドの顔である。 正確にはギルドの顔はギルドマスターかもしれないが、しかし、ギルドマスターを普段目にする機会があるか、と言われるとやはり難しい。 通常、皆が直接接する機会のある人間は誰かと言えば――そう、受付業務中の事務員なのだ。 私がギルドランクを上げて依頼に励むのを諦めて事務処理担当になってから、もうどれくらい経っただろうか。 いつの間にか私は、受付統括、などという、事務員としてはそれなりに上の地位に居た。 花形である受付業務は、基本的に1日3交代のシフト制である。 早朝から昼過ぎまで、昼過ぎから夜まで、夜中から早朝まで。当然ながら、夜中のシフトが一番人数が少ない。 そして今が、早朝シフトの開始時間となる。 「――引き継ぎは以上です」 「はい、把握しました。お疲れ様です」 「お疲れ様でーす」 深夜シフトの担当者と定型のやりとりを交わし、簡単な朝礼で早朝シフトの面々に情報連携。 そしてようやく、慣れたいつもの業務が始まる。 「ラキさん、先日のユキシル様の器物破損についてなんですが――」 「済みません統括、これ書類不備っぽいんですけど」 「ララララキさんラキさん、受付!依頼受付代わってえぇ!!」 早朝から任務を受けるギルド員は多い。 また、夜行性の魔物を相手にして帰還するギルド員もまた、それなりに多い。 あっという間にザワザワと活気溢れる様相を迎えた受付の内側で、やるべきことをやるべき順で着実に熟す。 「――お待たせ致しました、ヴェルゼ様」 世界最強と名高い、暁内の英雄の相手は荷が重いという悲鳴に応えて受付を代われば、窓口に居た方は小さく苦笑した。 「たまには受付で依頼を、と思ったんだが、ラキさんに余計な手間を掛けさせてしまったな」 「いえ。取り乱してましたが彼女も感極まって喜んで居ますので、いつでも是非」 「有難う。この時間にラキんが居て良かった」 ――この方が、私の名前を呼んで下さった日のことは、今でもハッキリと覚えている。 私は一介の受付職員。二つ名持ちの方々の事務手続きをすることもあるが、大事なのは手続きがされることで、私と話すことではない。 依頼受付など日常に埋もれる背景で、毎日やってくるギルド員ですら、私を私と認識しているか怪しいくらいの「受付」という記号。 それが普通で。 そんなものだと、感慨もなく、自然に受け入れていた。 それなのに、ティクル・エイスタ・ヴェルセエトラとしてお忙しいに違いないこの方が。 「いつも担当してくれると思ったら、あなたがラキさんか。 たしか受付統括になったんだよな? お疲れ様」 私のことを、覚えてくださっていた。 それがどんなに嬉しいことだったか、この方は恐らく、ご存知ないだろう。 そしてまたそれは、私が知っていればいい事だ。 「――それでは、これで手続きは完了です。行ってらっしゃいませ」 「ん、行ってきます」 私に出来ることは、基本、ただの事務処理だけ。 けれどこの言葉には、いつも万感の思いを込める。 「ご武運を」 こんな言葉で、何かが変わる訳では無いけれど。 それでも。 今日もただ、無事を祈る。
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