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――何もない白い空間に、2人の男女。
それぞれ片手に1枚の紙切れを持っている。
「あら、こんにちは」
「やぁ、どうも」
「……なんとなくは予想していたけれど」
「もしかして、そちらも同じ文面かな?」
「ええ、恐らく」
簡単な挨拶を交わした2人は、申し合わせたように苦笑した後、手元の紙に視線を落とす。
それから2人同時に、言った。
「これより、小説「漆黒の帝王」キャラクター人気投票結果雑談を開始します」
棒読みだった。
どうやら紙に書かれている文言らしい。
次からは1人ずつ、2人は読み続ける。
「司会は私、ユヤと」
「ギルド「小枝の曲線」ギルドマスター、クルトでお送りします」
「……雑談のお伴に屋台を用意しました」
「ワガナー食べて頑張ってー☆……だって」
くしゃ、と。
女性の手の中の、紙が無残に握り潰される。
男性があまり困っているように思えない声で、「困ったなぁ、ギルドも喫茶店もあるのに」と呟いた。
「……後で時間損害経費と司会報酬を、たっぷり請求しましょうか」
「あ、いい考えだね」
とりあえずこうして、雑談会は始まった。
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