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やはり戦闘に関しては、無駄に息が合う。
別に僕は――恐らくはイルガも――相手がやり易いように、なんて一切考えていないのに、狙った通りに動くし、自分も動ける。
子供たちに食事を邪魔されたのかヘイザムは既に怒り狂っており、ただ目につくものを攻撃し続けている。
今は弱点である耳を焼いたイルガに御執心だが、何か別の切っ掛けですぐに狙いは変わるだろう。
今のうちに、と、何やら「おい僕ちゃん、俺1人にやらせてないで早く狙い分けろよ!?あ、ちょ、くそ、おい!聞いてんのかクソガキ」とかなんとか、そんな声が聞こえた気がしたのを綺麗に流して、襲われていた子供の確保を急いだ。
2人の子供は、まだ大怪我もなく無事だった。
良く似た顔の、簡素な服を着た幼子。
弟と思われる子はただただ泣きじゃくり、兄と思われる子は腰が抜けたのかぺたりと座り込んで呆然としている。
そんな2人を見てふと「何か」が引っ掛かり、少し眉を寄せる。
何だろうか。特筆することもない、ただの子供に見えるのに、何か――小さな、
違和感が。
「っ――、っあ、あの、っ、た、たすっ、たすけてくれて、ありがとう!」
僕たちが来るのがあと1秒遅ければ死んでいた、と言う衝撃から漸く立ち直ったのか、茫然自失だった子供が慌て声を出す。
幼子特有のキラキラとした瞳で僕を見上げ、それからはっとしたように泣き続ける子供を宥め始めた。
今、一瞬ハッキリしかけたような「何か」が、すっと消えたのが分かった。
――気のせいだったのだろうか。
気にはなるが、今は考えている暇がない。
手早く2人に動くなと説明してから防御魔法を展開して、戦闘に意識を戻す。
振り返って丁度イルガの横腹を抉りそうになった攻撃の、軌道を変えて逸らした。
「おっせぇよ僕ちゃん!」
「……。ああ、済みません、この程度の時間も1人で保たせられないとは思わず」
――正直に言えばこの失礼な男がどんな怪我をしようが特に興味はないけれど、依頼を受けて協力すると決めた以上、進んで見捨てるわけにはいかない。
それがルールだ。
「<<陸に生まれし深海>>」
「うわ、防御魔法維持しながら詠唱破棄を軽々と……<<頭上から降る土塊>>、ホントに嫌なガキだな」
「……子供に負けて僻みとは、懐の狭い大人ですね」
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