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「いや…ゼミの課題で宿題が出て…。その、罪と罰を、友達と一緒の」
謙太郎は幼い頃から異性と関わる機会が極端に少なかった。
顔や性格が悪いのではない限り、よほど女運が悪いとしか思えない。
そのことは謙太郎自身が一番良く知っていたし、そんな自分の運命に女性と親しくすることは半ば諦めていた。
慣れない女の声が謙太郎の頭に直に響いく。
何か答えねば。
まくしたてたように一気に喋ると、香澄は鈴のような声で控えめに笑った。
「読書課題ですか。」
香澄の柔らかい反応に安堵し、はい。そうです。の返答はため息が半分混じってほとんど空気になった。
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