1 参加権

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    「え?」 思わず声に出た。 聞き間違えかと思った。 恐らく、室内の全員が同じ気持ちだっただろう。 死、なんて単語がこの場で登場するとは夢にも思わなかった。 いや、まるで想像できないことというわけでもない。 ただあまりにも現実味のない言葉で。 漫画や映画や小説や、そういったものの中でしか起こり得ない展開だと思っていたから。 負ければ死ぬ。 ある意味ではありがちな言葉だけど。 「つまり、勝ち残ることがイコールで生き残ることになる、というわけです。ご理解いただけましたでしょうか?」 「ふ……、ふざけんなっ!」 先ほどNGワードと答えた人が声を荒げて立ちあがった。 「死んでもらうだ? 生き残るだ? 何ふざけたこと言ってやがる! ンな頭のおかしいゲームに誰が出るかよ!」 正論だ。 しかし。 「ええ、そう思われるのが普通です。ですから当方は、無差別に参加者を募ることをいたしませんでした。  ここにおられる皆さんは、命を賭けてでも叶えたい願いを抱えておいでだと理解しておりますが?」 激昂していたはずの男は言葉を詰まらせた。 彼だけでない、困惑し、全員の感情を代弁する男に同調していたはずの人々が皆、何か言い辛そうに互いの様子を窺っている。
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