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数日前からえりんの様子がおかしいことには気付いていた。
正確には――そう、火曜日の夕方だ。今日が金曜日だから、三日前のことになる。
オレ、藍野緒斗と、蔓えりんはいわゆる幼馴染同士だ。
生まれる前から家は隣同士。
生まれた時期もほんの一カ月違いほどで、当たり前のように二人1セットで育った。
幼稚園、小学校、中学校と一緒に通って。
学力その他の理由で高校は別々になった。
普通なら高校生にもなれば、男女の幼馴染というやつは少しぐらいぎくしゃくしそうなものだけど。
このえりんというやつは、そういう思春期の繊細な心の揺らぎ、みたいなものは持ち合わせていないらしく。学校帰りなどに顔を合わせると、尻尾を振る犬よろしく纏わりついて来る。
オレとしても、そんな風に小さな頃から変わらない幼馴染のことは嫌いじゃない。
えりんと比べると遥かにひねくれてしまったオレではとてもとても言葉にできないけれど、オレだってあいつのことを大事に思っている。
だからこそ、他でもないこのオレが、えりんの異変に気付かないはずがなかった。
火曜日の夕方。学校帰りの道をいつものように歩いていると、同じく帰り道らしいえりんと鉢合わせた。
それ自体はよくあることだ。
よくあることだからこそ、いつもとは違う様子がとてもはっきりと分かった。
明らかに元気がない。
笑顔を見せはするものの、いつものような快活さがない。
何かあったのかと気にはなったが、本人に尋ねるのも憚られ、それとなく母親に話を振ってみた。しかし手ごたえはなし。どうやら気付いているのはオレだけらしい。
そのことがどうにも心に引っかかって、三日。
金曜日の夜、直接本人がやって来た。オレの部屋に。
夕飯を食べ終えて、見たいテレビも特になく、自分の部屋でもう飽きるほど読んだ漫画を何となくぺらぺらめくっていた時だ。
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