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「読んでみて」
「おう」
素直に受け取る。
何の変哲もないただの紙。学校で貰うプリントみたいなものだ。それにしては綺麗すぎるけど。
白い紙にくっきりと黒いインク。
横書きの文面に目を落とす。
一番上の一行はタイトルにあたるらしく、ひと際目立つフォントになっていた。
『NGゲーム開催のお知らせ』
上から下まで一読し、正直な感想が口から零れた。
「……何だこれ」
「ね? 思うでしょ?」
「思うでしょっつーか、何だよこれ」
何とも胡散臭い文面だった。迷惑メールを彷彿とさせる。
「月曜日にうちに届いたの。悪戯かなって思ったんだけど」
「悪戯だろ」
「うん……」
「差出人は?」
「封筒に住所と名前書いてあったけど、ネットで調べたらそんな住所なかった。名前もたぶん嘘だと思う」
「なんか気持ち悪いな。おばさんとかには見せたのか?」
この場合の「おばさん」はもちろんえりんの母親のことだ。
首を横に振る。
「話そうと思ったんだけど……」
どうも歯切れが悪い。
えりんとその両親はとても仲がいい。中学時代にささやかな反抗期をあっという間に通り過ぎたえりんは、毎日の出来事を両親に話すのが日課のようなものだ。
さすがにひとつの秘密も無いということはないだろうけど、オレが知っていておじさんおばさんが知らないえりんの話なんてほとんど無いはずだ。
普段ならこんな奇妙な郵便物が届いたらすぐに報告するだろうに。
迷っている。どうしたものか悩んで、悩んだ挙句両親ではなくオレに相談しに来た。
その理由は何となく察することができる。
文章の内容はこうだ。
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