1 参加権

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それから下の方には説明会会場までの地図。場所は同じ県内で、どこかの文化会館の一室を使うらしい。思ったよりも近い。 胡散臭い。 どうにも胡散臭い。 大体、種々様々な詐欺の横行するこのご時世、元手タダでいい思いができるなんてうたい文句がどれだけ信用ならないかなんて小学生にだってピンとくる。 しかもそれが「何でもひとつだけ願い事を叶える」だなんて…… お伽話のような都合の良さだ。 「お前、まさかここに行く気か?」 「……」 「マジかよ」 「だって」 「どう考えても駄目だろこれ。危ないって」 「そうだけどさ」 「いや分かってないだろ。お前なぁ、いくら何でもこれを信じるのはお人好しどころかただの馬鹿だぞ」 「……」 あ、まずい。泣きそうだ。 十七年の付き合いの中でえりんを泣かせたことなんて一度や二度ではないけど、だからといって平気というわけでもない。 「分かってるもん」 半分崩れた涙声でえりんが言った。 元々少し幼いところがあるけど、泣くとさらに子供っぽくなるのが特徴だ。 「分かってるけど、分かってるけど期待しちゃうのは、しょうがないじゃん」 「あー、うん。ごめん。オレが悪かった。泣くなよ」 「うん」 真っ直ぐな黒髪をぐしゃぐしゃ掻き混ぜてやるとこくんと頷く。いくつになっても素直なのはこの幼馴染の最大の美徳だ。 そして、素直と同時に結構な頑固者でもあることをよく知っている。
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