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さて、どうしたものか。
この場でオレがどんなに言葉を尽くして説得したところで、当日になればえりんはのこのこと会場まで出向くことだろう。
紙に記されていた説明会の日付は来週の日曜日。
もちろん阻止することはできる。オレの口からおばさんたちに打ち明けてしまえば、その日だけでもえりんを拘束してもらえるはずだ。
だけど――
両親に話せないことを、悩んだ末にオレに打ち明けてくれたえりんの気持ち。
それを汲んでやりたくなってしまうオレはたぶん、こいつを甘やかしているのだろう。
それに、えりんの「望み」は恐らく……
「……分かった。止めない。ただし、オレも一緒に行くぞ」
「え?」
「説明会。行くんだろ? お前一人じゃさすがに不安すぎるから、オレも一緒に行く。それで話だけ聞いてみて、ヤバいと思ったらすぐに帰る。それでいいな」
「いいの?」
「しょうがないだろ。オレもまあ……気にならないでもないし。付き合ってやるよ」
「ありがとう!」
「おわっ!?」
胸に抱えたクッションごとダイブされ、油断していたオレはものの見事に押し潰された。
躾のなってない大型犬のような女は輝かんばかりの笑顔。
「オト大好き!」
分かった、分かったからとりあえず離れろ。さすがにこれは恥ずかしい。
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