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「うむ、お主の疑問は尤もじゃ。ここは儂が即席で作った異空間じゃよ」
異空間? 何だそりゃ。訳分かんねえ。
それに、さっきから気になってたが、こいつ、俺の心読んでねえ?
「儂は神じゃからの。読心術なんぞ朝飯前じゃ」
得意げに胸を張る神を名乗るガキんちょ。
……もう、訳分かんねえ。
俺はついに頭を抱えた。
そんな俺にはお構い無しに、そいつが話し掛けてくる。
「お主、ここへ来る前の事を覚えておるか?」
「いや……」
俺は首を振った。
ここに来る前? 全く覚えてねえ。
俺はどうやってここへ来たんだ? いや、そもそもどうしてこんな所にいるんだ?
「むむ……ショックで記憶が飛んでおるのか。当然と言えば当然じゃが……。ちぃっと待て」
訳知り顔で頷くと、ガキは俺の額に手を伸ばしてきた。
その細い指にデコピンされた瞬間、俺は雷に打たれたような感覚に襲われる。
それと同時に、脳にどっと記憶が流れ込んできた。
そうだ。思い出した。
今日、俺は大学受験の合格発表を見に行ったんだ。
その帰り、居眠り運転していた大型トラックが俺に向かって突っ込んできて、そのまま―――
「―――ハッ!!」
唐突に現実に引き戻された。嫌な汗が額を伝う。
額だけじゃない。全身汗でびっしょりだ。
「思い出したかの?」
「……ああ。俺は、死んだんだな……」
沈んだ俺の声に、ガキんちょ……否、神は神妙に頷いた。
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