序章 遅刻

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「やっぱりな」  呆れたように首を横に振る春。  私は「テヘッ」と言い、頬に人差し指を突き刺し、舌を出す。  すると、桃香が私の肩を鷲掴みにし、荒々しく揺さぶる。  そして、大きい声で言う。 「なに、馬鹿みたいな仕草をしてるんだっ! 誤魔化すなっつの! なんか可愛いけどっ!」 「えー? 可愛いー? うわーい!」 「喜ぶなよ! 真剣に怒ってるんだよっ!?」 「えへへー♪」  桃香が手を放して溜め息をついて、再び口を開く。 「サクラには適わないねー」  よしっ! 私の勝ちだーっ!! 「では、五階に行くぞ」  四階と五階は練習場だ。お互いに戦いあって技術を身につける為にある。  私達はいつも午前中は必ずといっていい程、練習場に行く。 「あっ!!」 「どうしたのよ?」  桃香が耳を塞いで「五月蠅いなー」と言う。 「私の大好きな刀ちゃんがーっ! 家に置いてきちゃったの!」  私は漆黒の刀を武器に戦う。  その他の武器は全く使わない。だって、漆黒の刀が大好きだもん。
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