「ラブホテルに入ったら」

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 ――あれだけの騒ぎを起こしながらも、奇跡的に練炭と七輪を手に入れる事に成功した僕らは、次の障害に直面していた。 「……盲点だったわね。高校生である私達には、車のように手軽な密室が用意出来ないわ……」 「そうだね。いや、僕は気付いていたよ。でも、闇猫さんの動きが早すぎて、議論する暇がなかった」 「あら? 私のせいにするつもり? いやだ、心の狭い男ね」  おいおい、それは心外だな。つい今さっき、僕はキミに殺されかけたことを許しているんだけれども。  先ほどの公園のベンチで、七輪と練炭、そして一応怪しまれないように買ったサンマを抱え、並んで座る僕ら。  そんな僕達を横目で不思議そうに見ながら、子供達が駆け抜けてゆく。 「そういうつもりで言ったんじゃないよ。しかし、ホントどうしようか?」 「そうね……。じゃあ、ラブホでも行く?」  ブーッ!   僕は飲んでいた缶コーヒーを盛大に噴き出した。 「なななな、なんでそうなる?」 「何慌ててるの? 密室に出来そうで邪魔が入らない所なんて、ラブホくらいしかないでしょう?」  涼しい顔をして、なんという恐ろしいことを。 「ぼぼぼ、僕はそんなとこ入ったことないから分からないよ! てか、そんな事したら、そのラブホに迷惑がかかるじゃないか」 「いやね、私だってラブホに自分で入ったことなんてないわ。でも、友達からの話を聞く限り、なんとかなるんじゃないかしら」
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