「ラブホテルに入ったら」

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  ――議論の末、僕らは今、ラブホテルの前に立っている。  夢と魔法の王国を想起させるメルヘンな外観を持つこのラブホは、僕の持っていたイメージとは程遠いものだった。  なぜこんなに可愛らしいんだ? ここですることって、普通、アレしかないだろ? 「はぅ」 「ん?」  ちょっとだけ想像したら急に恥ずかしくなり、おかしな声が漏れた。  そんな僕の顔を、闇猫が小首を傾げて覗き込む。  やめてくれ。意識しちゃうじゃないか。  顔がどんどん熱くなる。なんか変な汗が出てきた。  なにしろ僕には、キスの経験すらない。  それ以前に、お付き合いしたこともないんだから。  そこまで考えたら心がマッハで落ち込んだ。  うん。やっぱり死のう。  その前に、だ。  七輪と練炭、そしてサンマの生臭い匂いを漂わせる高校生のカップル。  入れねーだろ、これ!  という僕の予想はあっさりと覆された。
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