「ラブホテルに入ったら」

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 ――僕らは数日前、いわゆる『自殺サイト』なるもので知り合った。  死にたいが、一人で死ぬ勇気が無いので、同士を募って皆で死のう、という人達が集まるサイトだ。  アクセスの大部分は冷やかしや誹謗、中傷なのだが、確実に本気の人も混じっていると有名なサイト、らしい。  そして僕も覗いてみたのだが、闇猫とはそこで偶然知り合ったのだ。 「えっと、なんであんなことしたのかな、闇猫さん」  闇猫、というのもサイト内でのハンドルネームなのだが。 「死にたいのならいいかな、と思って」  逃げるように踏み切りを後にした僕らは、駅から少し離れた公園のベンチに腰掛け、一息ついている。  闇猫はいつの間に買ったのか、ソフトクリームなんか舐めている。  ひと一人殺そうとしといて、随分余裕かましてるなぁ、コイツ……。 「確かに僕は死のうと思ってる。でもね、殺されるのはゴメンだよ」  ここはもっと怒ってもよさそうなものだけど、僕はどうも怒るのが苦手だ。
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