「ラブホテルに入ったら」

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「じゃあ、どうやって死のうかしら? クロスケさんは何か考えて来ているのでしょう?」 「クロスケでいいよ。うん、やっぱり自殺サイトでの死に方って言ったら、『練炭自殺』が定番なんじゃないかな。僕はそのつもりだったけど」 「ああ、一時期多かったわね。なるほど、あれなら眠るように楽に死ねると評判だものね。ついでにキレイに死ねるのであれば、それに越したことはないわよね、クロスケ」  評判て。  近所の井戸端会議で聞いてきたみたいに。  この子、見かけに寄らず面白いのかもしれないな。  僕は思わず口元を緩めた。  ところで、僕は「闇猫」と呼び捨てにすることを許してもらっていないけど。  てっきり「私は闇猫でいいわ」って言ってくれるもんだと思ったよ。  しっかり僕は呼び捨てにされていますが。 「さて、そうと決まれば行きましょうか」  すっくと立ち上がり、またしても僕の手を取った闇猫。  胸がドキリと跳ねたように感じるのは、手を握られたからなのか?  さっきは何も思わなかったのに。  それより、今度はどこかに突き飛ばされないように警戒しなくちゃな……。  ――僕らは、気付けばホームセンターの中にいた。  闇猫は練炭と七輪をカートに入れて、レジへとずんずん突き進む。  あまりに無駄の無い彼女の動きに、僕は付いていくので精一杯だ。
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