「ラブホテルに入ったら」

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「きょ~おは楽しいサンマの日~! 本格派~にはやっぱり七輪~!」  土曜日の昼下がり、満員の店内に、闇猫の陽気な歌声が響く。  沢山のお客さんが僕らを訝しげに凝視しつつ、固まった。  分かりますよ、皆さん。「こいつおかしい」「普通じゃない」「アブナイ」って思ってるんですよね……。 「サ、サ、サンマ~、サ、サマンサ~!」  サマンサって誰だよ?  闇猫はそんな冷ややかな視線にも屈することなく大声で歌い続け、更にスキップまで加えてレジへとショッピングカートを運んでいった。  猛スピードのカートは、途中小学生やお年寄りを跳ね飛ばした。  吹き飛ばされた人が陳列棚に激突し、商品が落下する。  湧き起こる悲鳴。飛び交う怒号。泣き叫ぶ子供達。  店内は阿鼻叫喚の地獄絵図と化している。  だが、闇猫はそんなことお構いなしだ。  どんだけサンマが楽しみなんだよ、そのキャラ!
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