3.曇り。晴れは来るのか

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その日の五、六時間は何も起こらずに過ぎていった。他のクラスと変わらないように、静かに授業は進み、何の障害もなく終わった。 それがかえって気味が悪かった。まるで嵐の前兆のようで。 次の日。 香緒里が自分の下駄箱を見ると案の定、『バーカ』『死ね』『キモイ』などと書かれた紙が何枚も上履きの上に乗っている。それをどかして鞄の中に詰める。上履きをひっくり返してみると今度は画鋲が数個出てきて床に落ちた。 わかってはいたことだけど…やること陰湿ね、本当。 画鋲を拾い上げ、近くのゴミ箱に捨てると教室に向かう。 雪音や石川に向いていたものが今度は自分に降りかかるのかと思うと気が重かった。 階段を登り、四階の二年一組の教室まで行く。今日はいつも以上にドアを開けるのが憂鬱だ。 ふと、上の方に気配を感じてその場から1、2メートル瞬時に飛び退いた。 バシャーンと派手な音をたてて先程まで香緒里がいた場所に水が降って来た。ドアの上の小窓を見るとクラスの男子がバケツを片手に驚いた顔をして小窓から覗いていた。 やる事えげつない。香緒里は少し顔をしかめ、水を避けながら教室に入る。 「ヒューッ!さっすが吉崎。一筋縄には行かねーな。」 「たーっぷり可愛がってあげるから、楽しませてよね?かおちゃん♪」 教室の窓辺にいる沢田と沙世はニヤニヤ笑いながらそう言った。…沢田まで、私に向かって来たか…。 新谷にかなわないであろう沢田の矛先が香緒里に向かうのはある程度は予想していたが…。 そして、やはり棗達は遠巻きに軽蔑の眼差しをこちらに向けてきた。 結局、友情なんてこんな物だ。あっけなく壊れてしまう。巻き込まれたくない、外で見ていたい。そんな人達ばかりだ。 わかっていたはずなのに、ショックを受けている自分に対して余計に悲しくなった。なんだかんだ言ったって、所詮私もそんな安い絆にすがりついている一人だった。わかっていたはずなのに。充分に。 馬鹿だな、私も。 はぁ、と大きな溜め息を一つつく。 「でけー溜め息。」 隣に座る新谷が言う。 昼休み、教室に居場所がなくなってしまった香緒里は屋上に来ていた。 「溜め息もつきたくもなるわよ。前より酷いじゃない。」 教科書にはカッターが仕込まれ、机の中にはゴキブリや蝉の死体があり、予習してきたはずの
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