4人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ~、翔太、それこっちの公式使った方が簡単だぞ?」
「あ、確かに。じゃあ…こうか。」
あの美術の時間以来、香緒里は新谷、雪音、石川といることが多くなった。沙世達からの嫌がらせは相変わらずだが、一緒にいてくれる人達がいることで随分と気持ちが楽になった。
今日の昼休みも四人で屋上に来ていて、石川は四時間目の数学でわからなかった所を新谷に聞いている。
「よし、正解!」
「あ~やっとすっきりした。やっぱり秀人の説明わかりやすいな。」
「伊達に学年一位取ってないね。先生よりわかりやすいかも。」
「ね。ってか二人いつの間にか名前呼びするようになったわね。」
雪音は新谷と石川を見比べて言う。つい数日前まではお互いに名字で呼び合っていた気がする。
「ま、最近からな。」
「でも、良かったわね。友達出来て。」
香緒里が新谷にそう言うと、『そうだな。』と笑った後、『でも』と香緒里の方を見て続ける。
「第一号はお前。」
「私?」自分を指して言う。「まぁ…そうかもしれないけど…男女で友情って成り立つの?」
雪音は首を傾けた香緒里を見て苦笑した。
「成り立つって。香緒里、考え方古いわよ?それ。」
「え~…?」
他愛のない話をしながら四人で一緒にいる時間が一番楽だ。教室や家にいるより、ずっと。無理なく付き合えて、何より信頼出来る気がした。
友達って…本当はこういう物だったのだろうか?
放課後の部活が終わった後、香緒里は雪音と落ち合った。
「お疲れ様。」
「香緒里こそ。いい絵描けた?」
「それなりに。」
香緒里は美術部に、雪音は女子バスケ部に所属している。美術部は部活の日は少ないが、部活のある日はこうして雪音と一緒に帰ることが多くなった。
二人が下駄箱で靴を履こうとしていると、前から沙世やその他の取り巻きの女子がやって来た。その中には棗、静、朱理もいる。
「香緒里、ちょっと話があるんだけど。」
沙世はそう言って見据える。
「ここじゃダメなの?」
「ダメよ。」
香緒里は少し息をつき、雪音を見た。
「先帰ってていいよ。」
「え、でも…私も行くよ。」
「雪音は来なくていい。私達は香緒里に用があるんだから。」
そう言うと沙世は背を向け歩き出す。着いて来いということなのだろう。
心配そうな顔をしている雪音に香緒里は少し微笑んで、『大丈夫だから。』と囁いた。
「それで、話って何?」
人気のない学校近くの公園に連れて来られた香
最初のコメントを投稿しよう!