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俺は大きなため息をついた。手間をかけた洗濯物は見るも無惨な姿に変わっていた。具体的に言えば泥水を吸い込んで茶色く変色している。俺は泥まみれの洗濯物を拾い上げる。
この状況で分かるように俺は昔から家事に向かない不器用な人間だ。皿を持てば割ってしまうし、掃除をすればちりとりに集めたゴミを撒き散らす。
「もう一回洗い直しかよ……」
俺は不器用な自分に文句を言いながら、再び洗濯物を洗濯機に放り込んだ。
しばらく洗濯機の中でぐるぐる回る布を目で追っていると、背後に視線を感じた。振り向いてみると、女の子がにやにやしてこっちを見ていた。
「また洗濯物落としたんだー」
俺の神社で働く『牧野双葉(まきの ふたば)』 黒髪をツインテールにして、目がぱっちりしている女の子だ。黙っていればそこそこ可愛いのだが、性格が大分ひねくれている。
服装は巫女服という(指定じゃないから)コスプレ少女という見方も出来る。まぁ似合ってるし本人の趣味だから誰も何も言わない。
俺はめんどくさそうに双葉の嫌みに返事する。
「風で飛んだだけだ!」
俺が失敗するといつも絡んで来やがる。嫌な奴だ。ちなみに双葉も霊とかは見えない人だ。だが、双葉と俺には決定的な違いがある。
双葉は家事において死角がない。つまりそこらのお手伝いさんよりよく働き、よく気が付く子なのだ。
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