第一章 悪魔殺し

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「ちょっと町の方まで降りて私にマンガ買って来て」 当たってほしいわけではなかったのだが、予想通り。双葉が単純な奴だということが分かった。 俺はしばらく考えた。この神社は林の中に作られていて少し歩かないと町には着かない。 だが滅茶苦茶遠い訳でもない。徒歩で片道約十五分。ただ、町まで降りるには坂道を上り下りしなければならない。 でも洗濯物に飽きたのも事実だ。外に出て気分を変えるのも悪くはない。 「分かったよ」 俺は気が進まないが、気分を変えるためにその条件を呑んだ。 * 街の本屋からの帰り道。どうやら俺は上り坂を嘗めていたようだ。思ったより疲れた。行きは下りだから楽だったのだが、帰り道の登り坂は、俺の体力をじわじわ削り取る。 歩いていると、鳥が急にバタバタと音を立てながら羽ばたいて空を自由に飛んでいく。見ると木々が生え揃っていて、上を見ると赤くなりかけの木の葉によって、アーチが作り出されていた。 この景色は好きだ。耳を澄ませば、風が木を揺らして、葉を揺らす音がする。小鳥が鳴く声が聞こえる。静かなのに色んな音がする。
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