ヘル・バック~雷~

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青年が瞳を開くと、視界には一杯の天井が広がった。 見たことの無い天井。 とりあえず上半身を起こして気づく。誰かの部屋のようだ。 自分はベッドの上。 本棚やぬいぐるみが置いてある。 見てわかる女性の部屋だ。 「乙女チックなことだなぁ」 自分の服を見る。 少し大きめのワイシャツ。 男ものというわけではなさそうだ。 女性の家に間違いない。 その時、扉が開いて何者かが入って来た。 「あっ、起きましたね」 入って来たのは、金髪紫色の瞳。 完璧なスタイルと顔。 「見たこと……テメェ、ゴーストか!?」 驚いたように言う青年。 ゴーストと呼ばれた女性が苦笑いをする。 そして、少し恥ずかしそうに後頭部を掻く。 「あっはは…今はゴーストじゃないんですけどね」 咳払い一つ。 青年に手を差し伸べる。 女性は満面の笑みだ。 「始めまして、アリシア・エアハートです」 「ヒャハハ…誰だと思ぅ?」 不意に見せる八重歯と笑顔。 女性は呆れたような顔をして言う。 「天白雷さん」 「よろしくなぁ…アリシアぁ」 笑う二人。 それはあの頃の彼らとは違っている。 そして天白雷は、物語の鍵に拾われた。
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