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「……ったく。掃除なんか誰もしやしねえ。町の奴ら、名誉ある宗得様の倉を何だと思っていやがんだ……」
薄暗く、開けた窓から射し込む昼下がりの日光に照らされながら愚痴をこぼす一人の人物。
平成の世だと言うのに、彼はその時代には不相応な衣服を身に付けていた。藍色の浴衣の上から桜色の羽織りを着ている、十代後半の少年の身長に幼さが残るような雰囲気の顔付き。老人のように真っ白な髪は、頭の頂より少し後ろの部分で一つ団子にまとめている。
苛立たしげに羽織りと浴衣を脱ぎ捨て、その下に着ていたのであろう渋染めの丈がスカートのように短い、子供が着るような浴衣姿になると、隅に乱雑に置かれていた箒と塵取りをがっしりと掴む。
「さぁて……倉中鷹兵衛の雑務ぶり、見せてやら!!」
誰に言うともなく、ホコリを被った荷物があちこちに置かれた薄暗い空間で叫んだその時だった。
「必殺、塵殺し────」
勇猛果敢に箒を振るう少年は、背後の何もない空間に現れた亀裂のような穴から伸びた手に、抵抗する間もないまま吸い込まれていった。
そして、古ぼけた倉が存在していたはずの土地には
「かーめーはーめー……」
「俺ブロリーだから効かないもんねー!」
「お兄ちゃあーん、はやく帰ろうよぉー……」
「じゃあ先に弘子は帰ってなよ!俺はブロリーを倒すのに忙しいんだ!」
「やだー!じゃあ私キュアムーンライトやるー!」
小学生達がたむろする、何もない空き地と化していた。
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