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場所は変わり、ここは幻想郷。幻想の存在となった者達が流れ着くと言われる、平成の世とは近くて遠い所にある楽園。
その幻想郷には人間はもちろん、妖怪や幽霊、果てには神までもが同じ地でそれぞれ暮らしている。
そんな幻想郷に存在する、人間達が集まって暮らしている人里。何やら騒がしそうに一つの場所に人々が集まっている。
「倉?」
「何でまたこんな所に……」
「邪魔にはならねえけどよ……」
「妖怪が仕掛けた新手の罠かもしれん……」
そんな声が飛び交う野次馬の前には、所々に小さなヒビや草の根が生えている古ぼけた倉が佇んでいた。
そして野次馬を掻き分けて倉の前に現れたのは、青みのかかった白い長髪に菱形の奇妙な帽子を乗せており、真っ青なワンピースのような服を着た一人の女性だった。
女性は騒ぐ人々を制すと、倉の両開きの扉をゆっくりと開ける。途端にカビ臭さが鼻を突き、女性は一瞬顔をしかめる。
「誰かいるのか?」
薄暗い空間に向かって、透き通るような声で呼びかける。すると、奥の暗闇で何かが僅かに動いたのを女性は見逃さなかった。
倉の外からは戻るように叫ぶ声も聞こえたが、女性は勇ましく倉の中へと進んでいく。
「人里に何の用だ?もし皆に危害を加えるなら……」
警戒しつつも、奥にいる何かに声をかける女性。その右手には、一枚の小さな紙のような物が握られていた。
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