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「…………────っちゅー訳なんだ。申し訳ねえが、わしにもよく分からんくてな……」
自分に声をかけた女性、上白沢慧音によって人里の皆と和解できた男。彼は今、慧音が開設している寺子屋の教室で彼女や他の人々から質問をされていた。
「するってーと、あんちゃんはここが幻想郷だって事も知らねえのかい?」
「ああ。そんな土地、見た事も聞いた事もねえときた。今のわしは右も左も分からん状態じゃ」
腕を組みながらあぐらをかき、中年の男の質問に答えた時、次いで慧音が口を開く。
「さっきから質問攻めで本当に申し訳ないんだが……お前の名前をまだ聞いてなかったな」
「お!?言われてみればそうじゃねえか!それは早く言ってくれよ上白沢先生!」
すまないと苦笑する慧音を見て自身の頭を叩き、あぐらを正座にして人々に向き直る。
「わしは倉中鷹兵衛(くらなかたかべえ)。元は人間だったが、今はあの倉を守る神じゃ。よろしくな」
それを聞いた里の皆は、一斉にざわめきを起こし始める。それにつられて慧音も目を丸める。
「お前……確かに普通の人間とは思い難いように見えなくもなかったが、神だったのか?」
「おうよ。人の身であった頃は、今は亡き御仁である梅原宗得という方に仕えておった」
梅原宗得。どこかで聞いた気がするが、思い出せない。そんな考えが頭を巡る中、里の人間から声があがる。
「あんた、本当に神様なのか?」
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