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その言葉に、幾人かがそうだとばかりに疑いの声をあげる。慧音も少しばかり疑問の色を浮かべ始める。
「信用ならねえか?しかし証明するものがなぁ……」
そう言いかけた時、慧音が目を見開いて鷹兵衛を驚愕の表情で見つめる。
「どうしたよ、先生?わしの顔に蚊でも付いとるか?」
「いや……お前が神だという事、信用しなければならないみたいだ……」
慧音が見たもの。それは、全身がうっすら半透明になっていく鷹兵衛の姿だった。それに気付いた若衆が指をさして叫んだ所、鷹兵衛本人もそれに気付く。
「な……何じゃこりゃ!?体が……わしの体が!?」
「皆!疑いの念を持ったらいけない!こいつは神だ!このままだと消えてしまうぞ!!」
慧音が村人達に咄嗟に叫ぶと、皆は慌てるように合掌したり、何かをぶつぶつと呟きながら目を閉じる。
しばらくすると、鷹兵衛の身体は透明度をなくしていき、ハッキリと姿が見えるようになっていた。
「ふぅ……危なかったな……」
「おぉ……何なんだ一体?」
「……あのな鷹兵衛。よく聞いてくれ」
安堵の表情を浮かべる鷹兵衛に真剣な顔で向き直った慧音は、神は人々から信仰され、崇められないと力を失って消えてしまう事、それが神にとっての死である事等、鷹兵衛に自分が知っている限りの神についての知識を話した。
「な……何てこった……!つまりさっきのを放っておくと、わしゃ消えちまっていたのか!?」
「完全に消滅するのは、誰からも存在を忘れ去られた時だろうな……」
慧音の返事を最後に、寺子屋に沈黙が訪れる。
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