七章 不審な事件

18/20
前へ
/171ページ
次へ
かたっぱしたかどんどん見てゆき、却下案は床に捨て、良いと思う案は、劉蓮が印を押した書類の傍に置いた。 ・後宮、黄貴妃の『妃』の身分の取りやめ及び帰郷について 胡蝶は最後の一枚の案書を見てハッとした。 結蓮…ここ一年近く会っていない。彼女は元気だろうか。 本来なら、第一太子の竜輝の妃になるはずだったが、その太子はいまは宮殿にはいない。 つまり、彼女は今、誰の妃でもなく後宮に独りいることになる。 (一生後宮にいても、ずっと独りでいることになる。ならばせめて家に帰したほうがいいだろう) 案書を胡蝶が賛成だと思う書類に重ね、開いた窓から後宮を見た。 胡蝶はハッとした。 庭園の草木が生い茂る場所に見知らぬ男がなにやらゴソゴソと手を動かし、姿を消した。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

140人が本棚に入れています
本棚に追加