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昌俊は言葉が出なかった。今までに感じたことのない気持ちだった。まわりの景色がすごくゆっくり進んでいた。
亜美の手はしっかりと彼につかまっている。
そのあと二人の会話はなかった。
でも昌俊はこのままずっと一緒にいたいと思っていた。このまま時が止まってほしいと夜空にひとつ輝く満月に願った。
彼女の家がだんだんと近づいてくる。あとほんの数メートルの所で亜美が昌俊に話かける。
「また、うしろ乗ってもいい?」
いつもの亜美とは少しちがっていた。
「いいよ。」
そして彼もいつもちがってやさしい返事だった。
出会って間もないのに、どうしてこんな好きになってしまったんだろう。
昌俊は、彼女のそばにずっと居たかった。ずっと。
二人を乗せた自転車には思いがたくさんつまっていた。
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